人は皆、ブラックボックスを抱えている。


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 これはどんな世界でも、どの世代でも共通して言えることなのですが、「人にどう思われているか」を気にして生きている人がとても多いという事実があります。


しかし、これはあまりいいことではありません。


人付き合いにおいて「あ、この人はいい人だな」と思われることは確かに大事ですよね。私なんて、僧侶になる以前、四六時中こればかり考えてました。前職のパン職人時代は、仕事において先輩職人たちよりも技術が秀でているように見られたい。シェフに誰よりも褒められたい!認められたい!悪く言われたくない!自分が一番正しい!…こんな感じでした。

まあ、僧侶になってから「いい人と思われたい」という気持ちがなくなったというわけではなくて、「好印象与える必要がそんなにない」という感じにシフトして行っているというのがしっくりきます。もうどうでもいいんです、そんなのは。

それよりも、お念仏を申しましょう。


・自分の言葉は自分にかけられている


人を誉める人がいるとします。すると誉める人の心が豊かになります。

また一方で、人を悪く言う人がいます。するとその言った人の心から血が流れているです。

つまり、自分の発した言葉というのは、自分のものなんです。他人に向けて言ったとしても、自分に言ってることと変わらないんですね。

これを踏まえて考えてみると、人から誉められること、人から悪く言われることは、自分の心には関係がないことに気づきます。他人からどうこう言われるということは本来、どうでもいいことなのです。しかし多くの人は、そのことに一生懸命になって、「褒められたい、悪く言われたくない」ということにとらわれてしまっていて、本当に大事なことが見えなくなっています。


「人からどう思われるか」ということよりも、「仏さまがどう思われるか」ということに焦点を当てて生きるのが仏教の生き方です。人間の考えることは所詮、似たり寄ったりです。どう思われたところで、そう大したことじゃありませんよ。それよりも、仏さまと交流を持つ方がオススメです。



・ブラックボックスは誰にも見せられない。


ブラックボックス(BlackBox)


…内部構造を見ることのできないよう密閉された機械装置をさして使う言葉。



「ブラックボックス」というのは、精密機械の基盤なんかにくっついてる黒い箱のことで、その中に集積回路なんかが入っていたりします。精密な部分を守るため、また、同業者に中をのぞかれて真似されないように、黒い樹脂でコーティングしてある部品のことを言います。

私たちも同じものを持っています。それが心です。

とても繊細でもあり、他人に見られては困るようなことばかり考えている心です。自分の心の底の底を全部他人に見せることのできる人が一体どれくらいいるのでしょうか。

私も、外っつらは立派な僧侶ですから、そりゃ初対面の方なんかには「清廉潔白、頭脳明晰」みたいに見られるように意識したりもしますが、実際、中身は何を考えておるやら。あえて晒すと、


「お金があればもっと楽ができるなぁ」「こんな頭の固い門徒さんと話すのめんどくさいなぁ」「今日はお勤めいくのがだるいなぁ」 etc…


みたいなことばかり、心の中を駆け巡っていたりします。これらはほんの一部です、まだまだ、私のブラックボックスはこんなものじゃありません。そうです、「ブラックボックス」とは「煩悩」のことです。

とにかく、心の中を全部他人に見せることはできないのです。それはたとえ親だとしてもです。みんな、のぞかれないように隠して生活しているのです。そのため、私たちは集団の中で生きているように見えて、実は一人で生きているのです。自分のブラックボックスをのぞかれないように、「人からどう思われるか」を一生懸命に気にして生きているのです。

さみしいことです。さみしいから、お互いに見せ合いたいと思うでしょう。けれども、普通の人には見せられません。よっぽど心が許せる人になら、少しだけ、見せることができます。


どんな人にも「心の許せる友人」みたいな人が、一人か二人くらいはいるでしょう。そう言った友達というのは、だいたい「悪いやつ」なんです。

なぜなら、自分のブラックボックスを見せてみて、「あ、お前もか」となるのが、気の許せる友人ではないでしょうか。ろくでもない、悪い人間が、良い友人なんです。

「いい人間」が相手だと、そうはいきません。教科書みたいに生きてきた人に対して、自分のロクでもない煩悩を少しでもさらけだそうものなら、「えっ?そんなこと考えてるんですか?信じられません!」と言われるでしょう。


深い悲しみや苦悩なら、なおさらです。

打ち明けられる友人がいたとしても、その心を全部くみ取ってくれるような人は、ほとんどいません。

そこに来てくださるのが阿弥陀さまです。南無阿弥陀佛のお念仏です。


「あなたの苦悩は私の苦悩です。あなたのよろこびは私のよろこびです。」


そう言って、私のブラックボックスの中を見て、どんなに愚かで恥ずかしい人間かわかった上で、その中に入ってきてくださるのが、阿弥陀さまなのです。


  覩見諸仏浄土因 国土人天之善悪

  建立無上殊勝願 超発希有大弘誓

  五劫思惟之摂受


 法蔵菩薩は師匠である世自在王仏に、様々な仏の国の、良いところ悪いところを見せてもらいました。その上で法蔵菩薩は、この上なく優れた仏の国を作りたいと願い、その国に「すべてのもの救いとる」という誓いを立てたのです。その願いと誓いは、いまだかつて他の仏がたが実現していない計画であり、法蔵菩薩は五劫という果てしなく長い時間をかけて、この計画を完成させました。


と「正信偈」の中にあるように、阿弥陀さまはすべての「良いところも悪いところも」見られた上で、「あなたを救う」と誓われているのです。



私たちは現実の社会の中では、本心を隠して、うまいこと生きています。しかし、それは仏様の視点からして見れば、周りを、そして自分自身を「騙し続けて」生きていることに他なりません。

そこに気づいた時、お念仏を申しましょう。

腹が立った時、人を馬鹿にするような気持ちになった時、いろいろありますが、ブラックボックスの中でしか見せれない気持ちが起きた時、「なんまんだぶ」とお念仏をしましょう。


「また周りに嘘をつきました。」「またみんなを騙しました」と、阿弥陀様にだけは報告しておきましょう。「他人にはバレない」と思って、またしょうもないことを考えておりました、すみません。なんまんだぶ なんまんだぶ。


「わかっていますよ、それがあなたです。そのまま救いますからね。大丈夫ですよ」

と阿弥陀さまがこの凡夫に言われます。

ブラックボックスの中で、阿弥陀さまと交流するのが、オススメです。

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